Final Cut Pro 6 - ダイナミックレンジと圧縮

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ダイナミックレンジと圧縮

ダイナミックレンジとは、ミックスの最小音量と最大音量の間の差異です。小さなささやき声と

大きな叫び声を含むミックスは、大きなダイナミックレンジを持ちます。エアコンや高速道路の

絶え間ない通行など、ブンブンという音が一定期間続く録音は、振幅の範囲がきわめて小さいの

で小さなダイナミックレンジを持ちます。

オーディオクリップのダイナミックレンジは、その波形によって実際に見ることができます。た

とえば、下に示すような

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つの波形があります。上の波形は有名なクラシックの曲の一部から取

り出したものです。下の波形は、電子音楽から取り出したものです。波形が大幅に変化している

ことから、クラシックの曲の方がダイナミックレンジが広いことが分かるでしょう。

電子音楽のレベルがほとんど一定であるのに対して、クラシックの曲では音の大きさが頻繁に変

化している点に注目してください。上の曲の左端で波形が長い線になっている部分は、無音では

ありません。実際は、曲の長くてレベルが低い部分です。

有名なクラシック音楽の波形

電子音楽の波形

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Part I

オーディオミキシング

ダイナミックな音には激しい音量の変化があります。信号の最大音量の個所のレベルを下げるか

または圧縮して、音が小さい個所の音量レベルに近づけることで、音のダイナミックレンジを狭

くすることができます。圧縮はミックスの音をより均等にできる便利な技術です。たとえば、列

車が駅に入る音、人の話し声、コオロギが鳴く夕暮れの音は、絶対的には音量が非常に異なりま

す。テレビや映画では、現実世界の周囲の雑音に妨げられないようにする必要があるため、小さ

な音が聞こえなくならないようにすることが重要です。

目標は、音を聞く環境の周囲の雑音に対抗するため、小さな音(この場合はコオロギの鳴き声)

を大きくすることです。コオロギの鳴き声を大きくするアプローチの

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つとして、単にサウンド

トラック全体のレベルを上げる方法がありますが、小さな音のレベルを上げると、大きな音(列

車など)のレベルが大きくなりすぎて歪みます。ミックスの音量全体を上げる代わりに、大きな

音を圧縮して小さな音に近づけることができます。大きな音を小さくすると(小さな音は同じレ

ベルのまま)

、大きな音を歪めずに小さな音を上げられるので、ミックスの全体的なレベルを上げ

ることができます。

圧縮は、適度に使用すればミックスの全体的なレベルが上がり、音を聞く周囲の環境に妨げられ

ないようにできます。ただし、信号を圧縮しすぎると非常に不自然に聞こえます。たとえば、飛

行機のジェットエンジンの音を夜の静かな森の音のレベルまで下げて、それから音量を最大に上

げると、森のノイズが途方もなく強くなってしまいます。

メディアやジャンルによって、使用する圧縮レベルが異なります。ラジオやテレビのコマーシャ

ルは、圧縮を使用して途切れることのない音の壁を作ります。もしラジオやテレビが静かになっ

たら、視聴者はチャンネルを変えるでしょう。広告主や放送局はそのような危険は冒したくあり

ません。映画館内は周囲の雑音レベルが低く、小さな音は小さな音のままで聞こえるので、映画

のダイナミックレンジはやや広めです。