音波の基礎
最もシンプルな種類の音波は正弦波です。純粋な正弦波は自然界にはほとんど存在しませんが、
正弦波以外のすべての音も分解すると正弦波の組み合わせになるので、理解を容易にするために
正弦波から説明します。正弦波は、音波の
3
つの基礎的な特性をはっきりと示します。それら
は、周波数、振幅および位相です。
周波数
周波数とは、音波が正の位置から負の位置へ移動して正の位置へ戻る周期の速度、または
1
秒あ
たりの回数です。周波数は 1 秒あたりのサイクル数、つまり Hz(ヘルツ)で測定します。人間
は最低
20 Hz
から最高
20,000 Hz
までの範囲の音を聞き取ることができます。この範囲を超える
周波数は存在しますが、人間が聞き取ることはできません。
振幅
振幅(または強度)とは音波の強さを表しており、これを人間の耳では音量や音の大きさとして
認識します。人間は静かな部屋でピンが落ちる音から大音量のロックコンサートまで、非常に広
範囲の音量を感知できます。人間の可聴範囲は幅広いため、オーディオメーターでは対数目盛
(デシベル)を使用して計測単位を管理しやすくしています。
0
–
+
1 ms
振幅
時間
第
1
章
オーディオの基礎
19
IIII
位相
位相は
2
つの似かよった音波の間のタイミングを比較します。同じ周波数の周期的な音波が同時
に始まると、
2
つの音波は同調していると言えます。位相は
0
から
360
の範囲で計測され、
0
度
とは
2
つの音が正確に同期する(同調)ことを意味し、
180
度は
2
つの音が正反対である(位相
の不一致)ことを意味します。同調する
2
つの音を合わせると、その組み合わせはより大きな音
になります。位相が不一致な
2
つの音を合わせると、相反する空気圧が相殺し合い、ほんの小さ
な音か無音になります。これは位相キャンセルと言います。
似かよったオーディオ信号を一緒にミキシングしたり、反響する部屋の中でオリジナルの音波と
反響した音波が互いに影響しあったりする場合は、位相キャンセルが問題になる場合がありま
す。たとえば、ステレオミックスの左右のチャンネルを組み合わせてモノミックスを作成した場
合、信号が位相キャンセルの影響を受ける可能性があります。
同調
独立した信号
ミキシングされた信号
位相の不一致
20
Part I
オーディオミキシング