ミキシングと出力に使用する参照レベル
ミックスのダイナミックレンジは、最終的な表示環境に依存します。たとえば映画館には、大き
なダイナミックレンジを再現できる大型で比較的高価な音響システムが設置されています。テレ
ビのスピーカーは映画館のものよりもずっと小型で、周囲の雑音が多い環境であることが多いた
め、信号全体を圧縮してダイナミックレンジを狭くし、レベルを引き上げない限り、小さな音は
聞こえない場合があります。
たとえば、テレビの放送局では、平均音量とピークの間には通常
6 dB
しか設けません。一方、
ドルビーデジタル処理される映画のサウンドトラックでは、平均レベルとピークレベルの間に
20
dB
を設けることが可能です。映画館で聞く大きな音が大音量なのはこのためです。
t
映画館での
大きな音は、平均レベルよりもはるかに大きいものです。
最終のオーディオをミックスする際には、平均レベルの基準を統一します。平均基準レベルを選
択することは、実際には、信号が歪むまでのヘッドルームにどの程度の余裕を持たせるかを選択
していることになります。平均レベルを高く設定するほど、信号のピークに対する余裕が少なく
なります。これは、ミックスの最大の音が平均レベルよりも十分に大きくならないため、ミック
スの力強さが損なわれることになります。
「
Final
Cut
Pro
」のフローティングオーディオメーターの基準レベルを−
20 dBFS
に設定した場
合、約
20 dB
のヘッドルームがあることになります。これは
0 dBFS
が最大音量のデジタルリ
ミットであるためです。シーケンス内の基準レベルを−
12 dBFS
に設定すると、ヘッドルームは
少なくなります。作業をするオーディオの平均レベルが比較的高い場合でも、ダイナミックレン
ジほど高くなることはありません。
用途
許容ダイナミックレンジ
劇場用ドルビーデジタル
20 dB
平均的なビデオテープ
12 dB
テレビ放送
6 dB
基準レベルが
–12dBFS
のときの
使用可能なヘッドルーム
-66
-36
-24
-18
-12
-6
0
-48
-
∞
68
Part I
オーディオミキシング
オーディオミックスにどのダイナミックレンジをどの程度許容するかは、最終的な出力方法に依
存します。テレビ放送用の作品を編集しているならば、
6 dB
のダイナミックレンジしか許容さ
れていないので、基準レベルは−
12 dBFS
で十分です。しかし、映画館で上映される作品を編集
しているならば、−
18
または−
20 dBFS
(どちらも標準として頻繁に使用されます)に近い基
準レベルを使用することを検討してください。
最終的な目標は、ミックスでオーディオのピークが
0 dBFS
を超えないようにし(「
Final
Cut
Pro
」
のオーディオメーターに表示されます)、アナログメーターでは+
3 dB
付近の値を超えないよう
にすることです。