「クロマキー」フィルタを使用した合成の概要
キーイングには何種類かあるフィルタの
1
つを使用することができますが、ビデオクリップの品
質に応じて複数のフィルタを使用することがよくあります。一般的に、キーイングで
2
つのショッ
トを合成するプロセスは、何種類かのフィルタを使用する
7
つの主要手順で構成されています。
詳細については、
434
ページの「
例:「クロマキー」フィルタを使う
」を参照してください。
手順
1
:
最高の品質を得るため、最初にカラースムージングフィルタを使います
背景からキーアウトしたいクリップにカラースムージングフィルタを適用します。このフィルタ
はクロマキーの品質を向上させ、コントラストが強い色の領域があるビデオクリップで斜めの
「階段状」に見える現象を減らします。
NTSC
または
PAL
の
DV-25
のビデオソースに対しては、
「カラースムージング
- 4:1:1
」を使用し
ます。(
PAL
の
Mini DV/DVCAM
は例外で、
4:2:0
のカラーサンプリ ングを使用します。)
DVCPRO50
、または圧縮をしていない
8
ビットや
10
ビットのビデオに対しては「カラースムー
ジング
- 4:2:2
」を使用します。
さらにキーフィルタを追加する場合には、
「フィルタ」タブのビデオセクションで、カラースムー
ジングのフィルタがはじめに適用したフィルタのままであることを確認してください。
手順
2
:
「クロマキー」フィルタを適用します
これで、
「クロマキー」フィルタをクリップに適用する準備ができました。キーを適用する色ま
たはブライトネスレベルを選択して、髪の毛、指、服のエッジなどの前面のサブジェクトの詳細
を消すことなく、背景を最も効果的にキーアウトできる色またはブライトネスの範囲が選択され
るよう調整します。
「狭める/広げる」スライダを使って前面のサブジェクトの周囲に表示され
る色もれを調整することもできますが、このスライダはあまり頻繁に使用しないでください。
∏
ヒント:「クロマキー」フィルタを使用するのが一番早くて簡単な方法ですが、「青または緑
バック」フィルタと「マスクエッジ修正」フィルタを組み合わせると、前面のサブジェクトの
周囲にさらに微妙な細部のある特定のクリップに、より密接にキーを適用することができます。
「青または緑バック」フィルタのコントロールの詳細については、
246
ページの「
「キー」フィ
ルタ
」を参照してください。
428
Part II
エフェクト
手順
3
:
「マスクエッジ修正」フィルタで色もれを取り除きます
前面のサブジェクトに手を加えずに可能な限り背景をキーアウトしたら、
「マスクエッジ修正」
フィルタを適用して、前面のサブジェクトのエッジ周囲にわずかに残っている青または緑のもれ
やピクセルを取り除きます。
「マスクエッジ修正」フィルタを使ってこのようなもれを取り除く
方法は、
「クロマキー」の「狭める/広げる」スライダを使用するのと同じ効果があります。ク
リップによっては、
「クロマキー」の強力な設定を使うよりも「マスクエッジ修正」フィルタを
使う方が効果があり、前面のサブジェクト周辺の細かい詳細をできるだけ残せる可能性が大きく
なります。
「エッジ調整(やせる/太る)」スライダを右にドラッグして、前面のサブジェクト周
囲に残るキーのわずかな色を取り除き、キーの粗いエッジを滑らかにします。
背景のキーアウトのために強力な設定を適用した結果、前面のサブジェクトにできた穴を埋める
のに、さらに「マスクエッジ修正」フィルタを適用することができます。
「エッジ調整(やせる
/太る)」スライダを右にドラッグして、キーアウト済みの背景領域を変化させずに前面のサブ
ジェクトの半透明の領域を埋めることができます。「マスクエッジ修正」フィルタのコントロー
ルの詳細については、
248
ページの「
「マット」フィルタ
」を参照してください。
手順
4
:
「クロマキー」フィルタの設定を再調整します
キーイングでは一般に、以前に適用されたフィルタの結果全体が新しく追加するフィルタの影響
を受けます。
「マスクエッジ修正」フィルタを適用した後で、
「マスクエッジ修正」フィルタのエ
フェクトを考慮して「クロマキー」フィルタの設定を再調整する必要があります。
「クロマキー」
フィルタの設定に加えた変更は「マスクエッジ修正」フィルタの機能に影響します。前面のサブ
ジェクトにまで侵食せずに背景を効果的に取り除けるようなバランスの取れた設定が見つかる
まで、「クロマキー」フィルタと「マスクエッジ修正」フィルタの設定を繰り返してください。
手順
5
:
スピル除去フィルタを使ってキーのサチュレーションを低下します
前面のサブジェクトのエッジ周辺に背景の色がわずかにもれている場合は、
「クロマキー」の「強
調」コントロールを使って色のもれを目立たなくすることができます。
前面のサブジェクト内に色のもれている領域がある場合(たとえば、薄手の服から色が透けて見
える場合など)、
「スピル除去(青)
」フィルタまたは「スピル除去(緑)
」フィルタを使ってキー
の色だけを選んでサチュレーションを減らし、目立たなくすることができます。ただし、スピル
除去フィルタは前面のサブジェクトの色全体に影響を及ぼすため、色補正フィルタを使ってこれ
を補正する必要があります。
第
20
章
キーイング、マット、およびマスク
429
IIIIIIII
手順
6
:
ガベージマットフィルタを使って要素を切り取ります
前面のサブジェクトのほかに、小道具、照明器具、そのほかの不要なオブジェクトなど、フレー
ムから除去したい「キーが適用できない要素」がある場合、ガベージマットフィルタのどれかを
使ってそれらの要素を取り除くことができます。ガベージマットフィルタの使用の詳細について
は、
440
ページの「
マットを使用してアルファチャンネルを追加する/変更する
」を参照してく
ださい。
手順
7
:
前面クリップと背景クリップの色が一致するように補正します
背景クリップと前面クリップが互いに一致するように撮影した場合でも、使用した照明が完全に
一致することはありません。そのため、通常は前面のサブジェクトか背景のどちらかの色を補正
して、この
2
つを確実に一致させる必要があります。「
Final
Cut
Pro
」での色の補正の詳細につ
いては、
545
ページの第
27
章「
色補正
」を参照してください。
∏
ヒント:キーフィルタを使って合成したいビデオを撮影するときは、照明の方向を前景と背景
の両方で確実に一致させることが重要です。色温度、相対ブライトネスレベル、コントラスト
は色補正ができますが、照明の方向は変更できません。
手順
8
:
背景レイヤーに対してさらに調整を行います
最後に、少し時間をかけて背景レイヤーの外観を操作する必要があります。背景クリップの前に
来る前面クリップを編集するのは、手始めにすぎません。ショットの外観を納得のいくものにす
るには、膨大な量の細部を検討する必要があります。たとえば、フィールドで撮影したビデオの
前面と背景は両方とも焦点が合っていることはめったにないので、ぼかしフィルタで背景の焦点
を外すとショットがより現実的なものになります。
そのほかにも、透明なグラデーションレイヤーを追加して風景をかすませたり、空の外観を調整
したりするなど、背景に適切な距離感を持たせるための工夫も考慮する必要があります。キーを
適用した他の前面の要素を追加しても、ショットの外観を面白くしたり、作成するショットに深
みを加えたりすることができます。
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Part II
エフェクト