色補正プロセス
前に説明した通り、色補正にはいくつかの目標があります。色補正のプロセスの概要を説明する
ため、このセクションでは次の
2
点に重点を置いて話を進めます:
Â
シーンの中の俳優またはキー要素を本来ある画調で再現する
Â
ムービーを構成するシーンで再現したい全体的な画調を決定する
ビデオプロジェクトはすべて一連のシーンで構成されています。あるシーンは夜間に撮影され、
別のシーンは真昼に撮影された場合など、シーンの色と色調が異なっている場合がありますが、
特定のシーンのショットはすべて一致している必要があります。この場合の目標は、シーン内で
のショットからショットへの流れがスムーズにいくようにすることです。あるショットが隣の
ショットより明るかったり赤みが強かったりした場合、結果は画面のつながりが悪くて視聴者の
気がそがれ、プロジェクトの仕上がりがプロとしてふさわしくないものになります。
シーンの異なるショットを互いにマッチさせる色補正の全体的なプロセスには、次の
5
つの手順
があります。
分割画面を移動するには、
別の場所に分割画面を
ドラッグします。
第
27
章
色補正
559
IIIIIIIIIIII
手順
1
:
色補正の基準として使用するシーンのマスターショットを選択します
1
つのショットで構成されるシーンを色補正する場合、作業はきわめて簡単です。その
1
つの
ショットに最適の設定を見つけるだけでよいからです。しかし、ほとんどのシーンは、クローズ
アップやミディアムショット、ワイドショットなどさまざまなショットで構成されています。
シーンには通常すべて、マスターショットと呼ばれるシーン全体を取り込んだ
1
つのワイド
ショットがあります。マスターショットはもともと、シーンで最初に撮影されるショットであり、
そのシーンの基準として使用されます。一般には、マスターショットの後で、一連のミディアム
ショットやクローズアップを使用します。これら以外のショットは、シーンでのさまざまな編集
作業を補う(カバーする)ために頻繁に使用されるので、カバレッジと呼ばれます。
シーンの色補正を行うときはマスターショットから始めます。これは、マスターショットが、通
常シーンを決定するショットであるからです。マスターショットを基準として使えば、カバレッ
ジショットの色をマスターの色とマッチさせることができます。
手順
2
:
原色補正を実行します
原色補正とは、「
Final
Cut
Pro
」の色補正フィルタの
1
つを使用して実行する
2
つの基本手順の
ことです。
「色補正」または「色補正(
3
ウェイ)」を適用した後で、次の
2
つの手順を実行します:
Â
クリップの黒と白を調整してコントラストを最大限にします。
基本的に、クリップの中で最も黒い部分を
0
の値にマップし、最も白い部分を
100
の値にマッ
プします。これを最初に行って、露出不足のイメージがカバーする範囲を広げたり、露出過多
の明るすぎる(またはスーパーホワイトの)映像領域を放送用のセーフゾーンまで下げたりし
ます。
Â
色補正フィルタの適切なカラーバランスコントロールを使用して、ショットの赤、緑、青のバ
ランスに調整を加えます。
こうした調整を行うときに、放送用ビデオモニタにクリップを表示したり、
「ビデオスコープ」タ
ブでクリップのルミナンスおよびクロミナンスのレベルをチェックして、十分な根拠をもとに修
正したりしたい場合もあるはずです。
手順
3
:
必要に応じて追加の色補正を行います
色補正フィルタを
1
回使用しただけで、すべてを仕上げる必要はないことに注意してください。
たとえば、クリップの薄暗い領域とハイライト部分の両方の色を
1
つのフィルタで正しく補正で
きないときは、薄暗い領域の方だけに重点を置いてください。ハイライト部分は
2
回目に色補正
フィルタをかけたときに調整できるからです。
560
Part III
色補正とビデオ品質制御
これらが機能するのは、各色補正フィルタには、色、ルミナンス、サチュレーションまたはそれ
らのいずれかの組み合わせに基づいてクリップの領域を分離するのに利用できる「エフェクト制
限」コントロールのセットがあるからです。
「エフェクト制限」コントロールは、クロミナンス
やルミナンスの調整機能とよく似た機能ですが、色をキーアウトするのではなく、色補正フィル
タのエフェクトをその領域だけに制限するという点が異なります。このようにして、シーンの緑
の芝生、木のハイライト部分および女優の赤い口紅を
3
つの別々のフィルタでターゲットにでき
るので、イメージを非常にきめこまかに制御できます。
手順
4
:
特定のニーズに対処するためにほかのフィルタを追加します
必要なすべての色補正フィルタの追加が終了した後で、別の問題が発生することもあります。ク
リップの特定の領域を補正しようとすると、どうしてもシャドウやハイライトに、不必要な色が
混ざってしまうことがあります。このような場合は、
「ハイキーのストレッチ」または「暗部の
ストレッチ」フィルタを追加して、すばやく簡単に補正することができます。または、使用して
いるフィルタの組み合わせではクロクミナンスやルミナンスが不適正な放送レベルまで拡張さ
れてしまうこともあるでしょう。そのような場合は、
「ブロードキャストセーフ」フィルタを使
用して、ピクチャの違反部分を許容できるレベルまで下げることができます。
手順
5
:
シーンのカバレッジをマスターショットにマッチさせます
シーンのマスターショットの画調を定義し終えたら、ショットの残りの部分に進みます。使用中
の色補正フィルタの設定を、同じシーンで使用した同じマスターショットの他の部分にコピーす
るのは簡単です。たとえば、シーンでマスターショットに
5
回戻る場合、補正したマスターショッ
トの最初の部分からシーケンスで使用されるそのほかすべての場面にフィルタをコピーするだ
けで済みます。
シーンで使用されるカバレッジショットに進むときに、各ショットで手順の
2
から
4
を繰り返す
場合もあるでしょう。新しいショットごとに補正したマスターショットと比較したり、前後にす
ばやく切り替えて
1
つのクリップの画調と別のものを比較したりすることができます。「ビデオ
スコープ」のクリップの値を比較して、クリップのカラー、黒、および白をできるだけ正確に
マッチさせるため、適用する色補正フィルタをどう調整する必要があるのかが分かります。
1
つのクリップの
1
つのセグメントの補正が終了したら、その設定を同じクリップのそのシーン
のその他すべてのセグメントに適用できることを忘れないでください。
1
つのクリップに複数の
色補正フィルタを適用する場合、他のクリップにもそのすべてを適用できます。
第
27
章
色補正
561
IIIIIIIIIIII
「
Final
Cut
Pro