ウェイ)」フィルタを使う
色補正フィルタを使用するとクリップの全体的なカラーバランスを調整できますが、
「色補正(
3
ウェイ)」フィルタではシャドウ、中間調およびハイライトのカラーバランスを個別に調整でき
るので、さらに制御機能が高まります。ピクチャのこれら
3
つすべての影響を受ける部分は重な
るので、ピクチャに対してきわめて複雑な変更を加えられます。詳細については、
510
ページの
「
黒、中間色および白
」を参照してください。
584
Part III
色補正とビデオ品質制御
撮影時に露出不足でホワイトバランスが正しくなかったために、オレンジがかったものとなった
クリップを、「色補正(
3
ウェイ)」フィルタを使って調整する方法を以下の例で説明します。
1
作業するクリップで「タイムライン」の再生ヘッドを移動して、作業した変更のビデオへの出力
が確認できるようにしてください。
外部放送用モニタをコンピュータに接続し、「表示」メニューの「外部ビデオ」サブメニューを
「すべてのフレーム」に設定して、
「キャンバス」の再生ヘッドの現在位置にあるフレームを、そ
れが何であれ、ビデオに出力されるようにします。
2
「色補正(
3
ウェイ)」フィルタをシーケンスクリップに適用します。
フィルタ適用の詳細については、
217
ページの第
12
章「
ビデオフィルタを使う
」を参照してく
ださい。
3
選択されているクリップを「ビューア」でダブルクリックするか、または選択してから
Return
キーを押して開きます。
4
「ビューア」の一番上にある「色補正(
3
ウェイ)」タブをクリックして、「色補正(
3
ウェイ)」
フィルタのパレットコントロールにアクセスします。
5
「ウインドウ」>「整頓」>「色補正」と選択します。
これにより、
「ビデオスコープ」タブが「ツールベンチ」ウインドウに開かれます。色の補正中
は、作業しながらビデオをより詳細に分析できるように、
「ビデオスコープ」タブを開いておく
と便利です。
この例では、このクリップ
全体のカラーバランスの
調整方法を示します。
「色補正(
3
ウェイ)」タブを
クリックすると、そのパレット
コントロールが表示されます。
第
27
章
色補正
585
IIIIIIIIIIII
6
「ビデオスコープ」タブの「レイアウト」ポップアップメニューから「すべて」を選び、すべて
のスコープが使用できるようにします。
これで、イメージの調整を開始する準備が整いました。
7
「自動コントラスト」ボタンをクリックして、クリップの白から黒までの範囲を最大にします。
「黒」と「白」のスライダが自動的に調整されて、
「ヒストグラム」に表示されるルミナンスレベ
ルに基づいた最適な数値配分が得られます。これで先に進む準備が整います。
イメージの露出が不適切な場合は、必要に応じて、ここで「黒」
、
「中間色」、
「白」の各スライダ
を調整できます。すべてのレベルコントロールと同様に、スライダを右に移動すると、影響を受
ける値をさらに右側に再配分し、イメージの影響を受けた部分が明るくなります。スライダを左
に移動すると、影響を受けた値をさらに左側に再配分し、イメージの影響を受けた部分が暗くな
ります。
この例では、イメージは露出不足ですので、
「中間色」スライダを右に移動し、イメージの細部
がよりはっきりと現れるようにします。
「すべて」を選ぶと、
すべてのビデオスコープが
使用可能となります。
「自動コントラスト」ボタン
「中間色」
スライダを右に
移動すると
...
...
イメージ中の細部がより
はっきりと浮かび上がって
きます。
586
Part III
色補正とビデオ品質制御
∏
ヒント:フィルムとビデオの重要な違いの
1
つとして、露出不足の場合にイメージのシャドウ部
分に保持される情報量が、ビデオではフィルムに比べずっと多いことがあげられます。露出不
足のビデオクリップのシャドウ部分からは、驚くほど多量の情報を含む詳細を取り出すことが
できます。一方、露出過多のハイライト部分については、ビデオの場合は何の情報も保持され
ていないのに対し、露出過多のネガフィルムには情報が保持されています。露出過多のフィル
ムのショットのピクチャは、テレシネ処理の過程で補正でき、変換されたビデオの色補正を行
うときに、最大限の情報を取り出すことができます。
参考:ネガフィルムと違って、リバーサルフィルムのシャドウ部分に保持される情報量はビデオ
と同じ程度です。
次は色に対処します。この例では、ビデオカメラのカラーバランスが日光ではなく、誤ってタン
グステン光源に設定されていたため、イメージの色調が過多に暖色系に傾いています。このこと
はショットを見れば一目瞭然ですが、カラーバランスがどれだけずれているかを「ビデオスコー
プ」タブ内の「ベクトルスコープ」の肌色ラインの上と右の色クラスタを見ると確認することが
できます。
8
この補正を開始するには、「白」の自動バランス・スポイトツールをクリックします。
参考:このスポイトツールをクリックすると、
「キャンバス」に移動したときにポインタがスポ
イトツールに変わります。
9
ピクチャの純白であるべき領域でスポイトツールをクリックします。イメージによっては、イ
メージの純白部分を選択したくないこともありえます。その場合は、イメージの、かすかながら
色が乗っている部分を探します。
光源や光沢のあるハイライトなど、露出過多の領域を選択してはなりません。そうすると適切な
結果が得られません。代わりに、十分に光の当たっているシャツの袖や白壁など、白いピクチャ
のなかでも適切に露出されている領域を選択します。
「色補正(
3
ウェイ)」フィルタは「白」のコントロールを調整して、ピクチャのハイライトと明
るい領域に影響している色を補正します。
「白」のコントロールの
近くでスポイトツールを
クリックします。
リアウインドウの白の背景で
スポイトツールをクリック
します。
第
27
章
色補正
587
IIIIIIIIIIII
クリップが赤みがかっているので、窓の外の白っぽく見える光景上でスポイトツールをクリック
します。
「白」のカラーバランスインジケータが青とシアンの混合色に移動して、イメージ中の
白が純白に変わります。
修正内容は「キャンバス」に表示されます。
参考:
「白」の自動バランス・スポイトツールを使用中は、選択している白の領域を照らすライ
トの色温度は、実行される補正のヒューに影響することを認識することが重要です。ピクチャが
日光とタングステン光源を組み合わせて照らされている場合、ピクチャの日光で照らされている
部分を選択すると、赤を追加してイメージの全体的な色温度を補正することになり、ピクチャの
タングステン光源で照らされている部分を選択すると、青を加えて補正することになります。そ
のような場合は、最も近いと思える色の部分を選択してください。
次に、イメージの黒に重点を置いて、もっと正確な色になるようさらに調整します。
「白」のカラーバランス
インジケータが移動して
白を補正します。
操作前
操作後
588
Part III
色補正とビデオ品質制御
10
「黒」の自動バランス・スポイトツールをクリックします。
11
ピクチャ内のニュートラルの黒と思われる領域でスポイトツールをクリックします。イメージに
よっては、純粋な黒よりも多少明るい場所を選択し、イメージのその部分に影響している可能性
のある何らかの色が現れるようにした方が役立つケースがあります。
「色補正(
3
ウェイ)」フィルタは、
「黒」のコントロールを調整して、ピクチャのシャドウにあ
る色のずれを補正します。この例では、黒にシアンを加え、イメージのシャドウに存在する赤を
補正しています。
ここで追加の手順として(普通は色補正するクリップに、そのスレートと一緒に撮影されたチッ
プチャートがある場合に必要です)、
「中間色」の自動バランス・スポイトツールを使用します。
「黒」のコントロールの
近くにあるスポイトツールを
クリックします。
スポイトツールをヘッドレストの
黒の領域でクリックします。
操作前
操作後
第
27
章
色補正
589
IIIIIIIIIIII
12
「中間色」の自動バランス・スポイトツールをクリックし、次にニュートラルグレイであるべき
チップチャート領域でスポイトツールをクリックします。
「色補正(
3
ウェイ)」フィルタは「中間色」のコントロールを調整して、ピクチャの広い中間領
域にある色のずれを補正します。
参照するチップチャートがなく、背景のグレイがニュートラルかどうか確信が持てない場合は、
この手順の実行については悩まないでください。
「白」と「黒」の自動バランス・スポイトツー
ルを使用するだけでも、一般には良好な結果が得られます。
自動バランス・スポイトツールを使用して、適切にバランスの取れたイメージを得ることができ
たら、次にそれを微調整します。必要な画調を本当に達成するには、手作業で各種のカラーバラ
ンスコントロールを調整する必要があります。カラーバランスコントロールを調整するときは、
最初に白を補正し、次に黒を補正するというのが普通の手順です。これら
2
つの手順は、自動バ
ランス・スポイトツールを使ってすでに実行済みです。次に行うのは中間色の調整で、これによ
りきわめて正確な補正を、この上なく微妙なコントロールで実行できます。
13
カラーホイールの
1
つのどこかをドラッグして、カラーバランスインジケータを前の位置から相
対的に移動させます。白と黒では自動バランス・スポイトツールをすでに使用しているので、さ
らに調整する場合、それらの位置が出発点になります。
この例では、
「中間色」カラーホイールでカラーバランスインジケータをドラッグして、シアン
と青のミックス量を増やし、イメージの色調を涼しげに変えています。その効果が特にはっきり
現れているのは、俳優の顔と乗用車のルーフです。
「中間色」のコントロールを
調整してさらに青を追加します。
590
Part III
色補正とビデオ品質制御
以下の図で、この変更の前と後を比較してください:
このような調整を行う場合、
「ベクトルスコープ」の肌色ラインを使って、俳優の顔の色がどこま
で正確に表現されているかを確認するというのも賢明なやり方です。
「ベクトルスコープ」の分析
から明らかなように、調整前のイメージでは肌色ラインまわりの色クラスタにはまだわずかな色
ずれが残っていました。
「中間色」のコントロールを調整してこれを補正します。
この時点では、このイメージをそのほかのショットとマッチさせる必要はないので、どのような
画調でも選択できます。温かくする、涼しげにする、あるいはそのほかの現実にはないようなカ
ラーバランスにするかどうかは、この時点では創造性の問題です。ただし、現実的な雰囲気にし
たい場合は、抑え気味にして微妙な変更を加えるだけにすることが重要です。
必要とするカラーバランスが得られたら、次は目標とする画調を完成させるためクリップのサ
チュレーションを調整します。
操作後
操作前
操作後
操作前
肌色ライン
第
27
章
色補正
591
IIIIIIIIIIII
14
「サチュレーション」スライダをドラッグして、サチュレーションを増減します。
これは注意して実行してください。初心者がえてして犯しやすい誤りの
1
つに、見栄えを良くし
ようと、ついショットにあまりに鮮やかな色付けをするということがあります。サチュレーショ
ンを高くした方が良いことも時にはありますが、実際には鮮やかさを抑制した方が場面の見栄え
がよくなるケースの方が多いものです。人工的に鮮やかな色を設定したビデオカメラを使用して
いる場合は、なおさら注意が必要です。
この例では、これまでに適用した補正が原因で、イメージのサチュレーションがやや高くなって
います。「ビデオスコープ」タブの「
RGB
パレード」スコープの赤の
3
番目を見ると、 そのこと
がよく分かります。
参考:例によって、サチュレーションの調整は、必ず適切に調整された放送用モニタで見ながら
行います。コンピュータ画面での映像の見えかたに基づいて、間違ってクリップの色のサチュ
レーションを上げすぎてしまうのは実によくあることです。サチュレーションを高く設定し過ぎ
て意図せず不適切なクロミナンスレベルにしてしまわないように、
「クロマ超過」オプション(
「表
示」メニューの「レンジチェック」サブメニューにある)を有効に設定しておくのも賢明です。
サチュレーション調整前
サチュレーションの
調整後、赤のレベルが
少し下がっています。
592
Part III
色補正とビデオ品質制御